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常磐紀行(1)
JUGEMテーマ:旅行
吹く風をなこその関と思へども道もせにちる山ざくらかな(源義家)
母親の快気祝いを兼ねて、家族4人で去る12日から1泊2日の旅行に出掛けた。めいめい好みの駅弁を買い、上野駅12時発の「スーパーひたち23号」いわき行きに乗車。天気は快晴。遠くには筑波の山。列車は梅花咲く偕楽園の脇を抜け、北茨城の海岸線近くを走る。

福島県に入った列車が勿来(なこそ)駅に着いたのは、13時57分であった。源義家の像が建つ駅前から、タクシーで勿来関跡に向かう。勿来関は、白河関(しらかわのせき)および鼠ヶ関(ねずがせき)と合わせて奥州三関と称されている。この関より北側は「みちのく」であり、蝦夷(えみし)と呼ばれた原住民たちは朝廷に対して長らく叛乱を繰り返す。 ― 「なこそ」という名じたい、蝦夷が「な来そ(=来るな)」との思いを込めて付けられたとも云われる。

そうした叛乱の中でも、11世紀後半に起こった2度の戦乱は非常に大規模なものだった。俘囚(朝廷の支配下にある蝦夷)の長と云われた安倍頼時は、陸奥国奥六郡(現在の岩手県中部)で勢力を振るっていたが、貢租を滞納するなど国司の統制に服さなかった。これに対し、朝廷は清和天皇の子孫である源頼義を陸奥守・鎮守府将軍に任命して討伐させる。安倍氏は頼義の武威に畏れをなして降伏するも、頼義が平安京に戻る直前の天喜4(1056)年に再び叛いたため、頼義は同地に踏み留まって鎮圧した。世に言う「前九年の役」である。聞くところによれば、元首相の安倍晋三氏は頼時の末裔らしい。「真正保守」派の有力人士が逆賊の後裔とは不思議な因縁だ。

義家は頼義の嫡子であり、20代前半で「前九年の役」に従軍してもいる。同時代人から「天下第一武勇之士」(『中右記』)と評価されるほどの個人的能力に加え、父から受け継いだ財力や精強な家臣団(東国武士が中心)を背景に武将としての高い名声を得た。永保3(1083)年に陸奥守・鎮守府将軍として現地に赴任すると、安倍氏に代わって勢力を伸ばした清原氏の内紛に介入する。この戦いを「後三年の役」と呼ぶが、朝廷は「義家の私戦」として恩賞を与えなかった。折しも、白河上皇による院政が始まった時期であるが、源氏の擡頭を快く思わない勢力が朝廷内部に存在したのであろう。やむを得ず、義家は私財を投じて兵士たちに恩賞を与え、却って源氏の声望は高まった。〔安田元久『源義家』(吉川弘文館)参照〕

と同時に、義家は文才にも優れていたようで、陸奥国へ下る途中に詠んだ本文冒頭の歌は勅撰集の一つである『千載和歌集』に「陸奥国にまかりける時、勿来の関にて花の散りければよめる」との詞書と共に収められている。

実を云うと、勿来関の正確な所在地は明らかになっておらず、花の散る時期に義家が陸奥国に下向したという記録もない。だが、平安時代から歌枕とされ、江戸時代には関跡が整備された。前に書いた弁慶の話ではないけれども、歴史は分からないことばかりだ。

常磐紀行(2)につづく。
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